2007.02.24 (Sat)
ティナ・スモール物語(22)
「ふうん。 それ聞いてたんだ。 どんな感じだった?」 と私。
「そんなこと言えないわ」
「そこまで喋っといて、それはないなー」
ロウェーナの頬は薄く染まり、目はキラキラと輝いていました。 それを見て笑う私に、今度は彼女のほうから攻撃をしかけてきます。
「あんたはどうなのよ。 これまでにファックの経験は?」
訊いてきた途端、ロウェーナは笑い転げました。 質問の意はともかく、大胆にもファックと口走ってしまったことに対して可笑しかったのかもしれません。 二人ともまだそれほどまでにうら若き乙女だったのですから。
答を探しながら私も頬が熱くなるのを感じます。
「私もまだ」
「そうかしら? モテたと思うわよ」
「ううん。 ここに来る前は女子校だったの。 それに私の生まれた村では同い年の男の子がいなくって。 ああ、そう、格好のいい男の子って意味でね。 一度だけ、顔中ニキビだらけ、髪は脂だらけの男の子に追いかけられたことがあるわ。 それもアレ…を出しながらよ」
「お、ちんちん、のことね?」。 ロウェーナはすっかりくつろいだ様子でした。 調子にのった彼女はこう訊ねます。
「私ね、いままであなたほど大きな、その…、もった女の人を見たことがないわ」
「おっぱいのことね」。 今度は私が出し抜きました。
「そう。 あなたの胸をさわってみたいって男の子は、いっぱいいたと思うの」
「いたわ、一人だけ。 スクールバスでさわられて、頭にきたからコンパスで背中、刺しちゃった」
彼女は笑いました。 その表情はやがて幾分憂いを帯びたものに変わっていきます。
「私ももっと大きかったらなって思うわ」。 ロウェーナはそう言って自分の薄い胸を見下ろしました。
「でもね、見ての通り、楽じゃないわよ。 代われるもんじゃないわ。 この胸のせいで、12の頃から仰向けに寝たことがないの。 もちろん横向きにもね。 走るのだって億劫で、遅刻しそうになったってバスを追いかけることもできなかったわ」
「わかるわ。 今まであなたほど大きい人、見たことないもん」
「見てみる?」。 私が訊くと彼女は大きく首を振って頷きました。
「うん! 私のも見る?」
私は立ち上がって上着を脱ぎはじめました。 下はノーブラです。 ブラを着けているとリラックスできない私は、夕方にはいつも外していたのです。
上半身裸になった女二人が向き合います。 ロウェーナを見ると痩せた胸はまるで少年のようで、その真ん中に、喩えるならば葉巻の吸い口のような大きな乳首がそなわっていました。 彼女の顔はやや火照り、その表情はおどろきに包まれていました。
「…なんか、言葉が出ないわね。 世界七不思議の次、八番目か九番目あたりの不思議ね。 乳首なんてまるで空飛ぶ円盤じゃない?」
互いの胸におそるおそる手を触れ、躁的な笑いが長く部屋を充たします。 ふと彼女の瞳に目をやった私は、その瞳に決して笑いのせいばかりではない、潤みがあることに気づきました。
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