HEAVEN

叫びを聞きつけて部屋に入ってきた姪の李は、炎に包まれている周岩をベッドの上にあった掛け布団で覆います。
ようやく火が消え、少し落ち着きを取り戻した周岩はこう言ったそうです。「警察には連絡しないでください。彼の両親は官僚です。警察に捕まっても一週間もすれば出てきて、その後うちの家族は死に追いやられるでしょう」。

重度のやけどを負って安徽医科大学第一付属病院に搬送された周岩の状況はひどいものでした。7日間にわたって集中治療を受け、ようやく一命を取り留めたというやけどは、片方の耳が焼失、顔面から頸部、胸部から大腿部に至るまで2度から3度のやけど、左手の機能障害すら伴いました。
周岩はヒステリックになりました。食事をとることを拒み、体を自由に動かせない辛さから舌をかみ続けました。

陶汝坤の両親は周岩が集中治療を受けている時に現れました。そして周岩の家族に陶汝坤の保釈（中国語で「取保候審」）に同意するよう迫り、同意しなければ治療費も払わないと脅しました。周岩の家は貧しく、このままでは莫大な治療費を支払うことはできません。周岩は応急手当を受けたままの状況でやむなく自宅に戻されました。



陶汝坤は拘置されたままでしたが、裁判は一向に始まりません。陶汝坤の両親が裏で手をまわしていたからです。
しかし翌2月、途方に暮れた周岩の両親が、微博（中国版twitter）で事件を訴え、娘の画像を掲載したことでネットの反響を呼び、いくつかのメディアにも取り上げられてから状況が変わりました。

おりしも「官二代」の横暴が世間を賑わせていた頃です。ネットの圧力は陶汝坤の父親に微博上で謝罪するに至らせ、周岩に皮膚移植をさせるために多大の寄付金が集まり、ここに至って当局もようやく重い腰を上げました。

4月23日、事件から7か月後に合肥市包河区人民法院は、陶汝坤容疑者を故意傷害罪で起訴。周岩の家族は公開審理を強く望んでいましたが、裁判所では加害者、被害者ともに未成年のため、許可はしませんでした。マスクに包帯、車いすと言った姿で現れた周岩の見守る中、陶汝坤には12年1か月の懲役が宣せられました。

現在の周岩はネットを通じて有志から送ってもらった七弦琴を習いながら少しずつ生きる気力を取り戻し、将来は医学の道を志したいと述べているそうです。