2012.01.08 (Sun)

『異国風情』 中国女大学生北朝鮮留学実録 - 3

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いっぽうで有り難いことに外国人留学生に対しては食事は無料で支給してくれる。
ほかに宿舎の中には美容室や男性用の理髪室、卓球場、ビリヤードプール、食堂も付いてるがこれらの利用料は別に払わなければならない。

通常は平日、朝に始まった授業が終わるのは1時過ぎ。そのため私たちは腹を空かせて宿舎に戻り、まっすぐ食堂に向かった。朝昼晩の食事は時間通りに提供される。積み重ねられている大きなトレイを手にして、その上に惣菜の入った小皿をとって並べ、飯と湯(スープ)を盛ってもらい、最後に鉄製の箸とスプーンをとる。

ただ食事はいつも冷めていた。分量も少なく、北朝鮮に着いたばかりの頃は適応しにくかった。それでも不平を漏らす者はいなかった。私たちは徐々に慣れ、自分たちで麺を煮たり、ご飯を炊いて食べはじめた。その頃には授業を終えてからまるで100メートル走のように一目散に食堂に駆け込むこともなくなっていた。

北朝鮮においては通常、ネットはつながらない。そこで娯楽は読書あるいは映画といったものになる。
そこで私たち留学生は、中国大使館の協力の下に宿舎内に図書室を設けることにした。さらには大使館の教育部留学服務センターから毎週、中国国内で発刊されている新聞や各種雑誌を送ってもらうようにも取り付けた。送ってくれた新聞はすでに古かったが、国内外の近況のニュースに飢えていた私たちにとっては感激以外の何ものでもなかった。

書棚は次第にページの黄ばんだ古ぼけた本で埋まりはじめ、私たちは小さな図書室で押し合いをしながら借りる本を決め、部屋に持ち帰った。
街は静かだった。ベッドに横たわり、窓を開け放っていると、朝は鳥の声、夜には虫の音が大同江(テドン川)のほとりから聞こえてくる。まるでおやすみなさいと囁くようなそよ風は、その日一日の収穫をたしかめ、心の平安を取り戻すには充分なものだった。

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【北塞商業街】
外国人宿舎の正門を出て左に折れ、そのまままっすぐ歩いて行くと北塞という場所に行き着く。北塞は平壌市でも一、二を競う富裕区で、高級住宅街があり、商業、文化の中心地であるとされている。
立ち並ぶ20階建てという高層マンションはどれも簡素な造りで、遠目に見ると廃墟のように見えなくもないが、ここは確かに北朝鮮の富裕区なのである。
隙間なく建てられたそれぞれの棟にはスポーツジムがあり、付近には小さな公園があり、書店や映画館なども配置されている。昏く全層にわたってコンクリートの打ちっ放しのようなこれらの建物を私たちの価値判断によって、単純に高尚落魄を評してはならない。そのトーンは北朝鮮という国家全体に通じるものだからである。

鶏腿肉、泡菜炒飯(キムチチャーハン)などはどこの店でも美味い。食に関してはそれぞれの店のメニューは大同小異だ。私たちはそれぞれ自分の好みで馴染みの店をつくった。
私がとくによく通ったのは、黎明餐館、明興餐館、民族餐館などで、いずれも北朝鮮ウォンで支払いができた(店によっては北朝鮮ウォンによる釣り銭などの小銭がないところもある。そうした場合、店では借用証のようなものを発行したり、現物で立て替えたりする)。

この北塞商業街には大規模なデパートこそないものの、生活必需品はおろか贅沢品もたいがいのものは手に入る。北朝鮮のトレンドの最前線をいくという売り場には、同じ仕立てのスーツを着用した店員が、数多くのブランド品を提供する。シャネル、ディオール、プラダ、CK、資生堂、SK-II、ランコムといったブランド品が並ぶ一画は、外貨で決済しなければならず。価格はけして安くはないが、アイテムやスキンケア用品、香水とあらゆるものが入手可能だ(※ この北塞商業街には家電や時計といった多くの日本製品も陳列してあるそうです。ただし決済は米ドルおよびユーロになります。ただ今月2日のデイリーNKによると、金正日の遺訓として「外貨使用禁止令―ドルと人民元をはじめとする一切の外貨を市場で流通した場合、麻薬よりも厳重に処罰する」旨の指示が出されたという話も伝わっています)。

もし平壌市がいつの日か、世界の目にとどまる日が来るとしたら、市の中心部、凱旋門の近くにある北塞商業街はきっとおどろきの目をもって迎えられることに違いない。そうぼんやりと感じた私は、ちょうど二十歳の誕生日をここ、平壌で迎えた。

strange | (11) comment  EDIT

Comment

どこにいても情報がないというのはこわいなあ
高尚落魄の意味が分からないや
ねこそぎ | 126976 | 2012年01月08日 19:27 | URL 【編集する】

桜が咲いている
童貞〜怒りの脱出〜 | 126977 | 2012年01月08日 19:29 | URL 【編集する】

突貫ビルが見える
裸族のひと | 126978 | 2012年01月08日 19:50 | URL 【編集する】

続きのUPに 感謝いたします。 m(._.)m
裸族のひと | 126979 | 2012年01月08日 19:54 | URL 【編集する】

>この北塞商業街には(前略)あらゆる(中略)金正日(後略)伝わっています)。

これが事実なら人民は普通に贅沢品を手に入れることは不可能よね?
収賄でもしなければ北朝鮮ウォンをたくさん手に入れることはできないだろうし、
贅沢品を持っていたら「どうやって手に入れた?」って話になるだろうし、
外貨だと重罪、収賄でも罰せられるでしょ?
死罪かもしれないし。
そんな危険犯して贅沢品なんて誰も手にしようとは思わないでしょ。




でさ
麻薬を国家が輸出産業としているという噂があるんだけど。
これが事実なら国のトップも重罪に処してくれるの?v-8
タナトス | 126980 | 2012年01月08日 20:06 | URL 【編集する】

今年も楽しく読ませていただいてます。
年末ぐらいだったかな?
ドイツのニュースで見たのですが、北朝鮮では中国からの観光客を公的に募っているそうです。
(映像は金正日が亡くなる前のものですが
観光客は、バスで決められた場所を回って、いつも団体行動だそうです。
宿泊先も固定されていて、テレビで見る普通の高級ホテルのようでした。
中国人も普通にものがある様子を見て驚いてました。
その街は、外国人を観光させるために作られたそうで、一般の人たちの立ち入りが禁止されているそうです。
ゆくゆくは、ヨーロッパ圏の人たちも観光できるようにするようです。
鳩子 | 126982 | 2012年01月08日 20:17 | URL 【編集する】

アジア No.1国:日本
     No.2  :シンガポール
     No.3  :韓国あたりかな?

     中堅層:インドとか周辺の島々。


      下位:中国


      最下位:北朝鮮


ベーゼルス | 126983 | 2012年01月08日 20:28 | URL 【編集する】

続きの掲載をありがとうございます。
とても読みやすくて雰囲気の伝わる訳で嬉しいです。
語彙力も豊かですね!

それにしても読み進むほどにつくづく不思議な国ですね。
富裕層の住むという、林立するマンションの部屋は、いったいどの程度埋まっているんでしょう。
すべての部屋に人が住んでいるのかな。
そんなにたくさん、富裕層がいるのかな。

たとえば、マスゲームに参加する人たちなんかは、富裕層に属するのだろうか。
道路もビルも、とても立派に整えられているけれど、あまりに閑散としていて、それが何か違和感を産むのかも。

こんなコンクリートジャングルで鳥の囀り虫の声とはねぇ。
朴念仁パンダ | 126998 | 2012年01月09日 01:28 | URL 【編集する】

街とその中の生活に艶が無いな
裸族のひと | 127107 | 2012年01月10日 05:47 | URL 【編集する】

別サイトの北朝鮮の旅行か何かのレポを見た時も思ったけど、いつ見てもなんかこうつまらない街(街並み)だなあ…
建物の外観一つとっても、意匠というかデザインというかそういうのが無いというか…(いや、これもデザインなんだろうけど、こう、見ててつまらない感じで。やる気がないというか)
道路も広いには広いけど、その広さが必要なほど車も人もいるように見えないし
全体的に地味っていうのとも違う、なんかもう「つまんない」としか…(´・ω・`)
あと看板類がほとんど見えないのもまた違和感

富裕層のマンションて、政府が「あなたはこういう功績があったから今日からこの広くていい部屋に移り住みなさい」的に住まわせるのかなあ
で、仕事とかでミスがあると「こっちのランクの低い部屋に移りなさい、挽回すればまた元の部屋に戻れますよ」みたいな…(旧ソ連かどこかでそういうのがあったとかなかったとか何かで聞いた)
裸族のひと | 127145 | 2012年01月10日 23:07 | URL 【編集する】

資生堂すげぇ
裸族のひと | 127196 | 2012年01月11日 20:17 | URL 【編集する】

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