HEAVEN

男性の名は蔡頂倫（30）。重慶市璧山県雙星大道の団地で保安を務める彼の名を知らない居住者はいません。
字を見、瞬時に画数を当て、しかも百発百中。でまかせか本当かそして特異功能なのか訓練のたまものなのか、記者は男性に会ってみることにしました。

蔡頂倫に前に新聞紙を差し出すと彼は記事中の漢字の画数をすらすらと答えていきます。18、24、33、9…、測ってみると11個の漢字の画数を7.4秒で言い当てました。１字あたり0.67秒というスピードです。
この特異功能について今年30歳の蔡頂倫はいささか得意げに語ります。
「漢字の結構（構造）や複雑さといったものに左右されませんし、その字を知ってるかどうかなんてこともあまり関係ないんです。字をパッと見るとその画数が頭に浮かぶんです」

初級中学卒業。しかも成績はクラス最下位だったという蔡頂倫。しかしいまでは多くの友人らが彼の才能に興味を抱いています。友人らは滅多に見ない漢字を探し出しては彼に画数を当てさせ、また漢字を創作してはその画数を尋ねます。そんな友人たちに蔡頂倫が失望を与えることはありません。


そんな蔡頂倫の才能は、2005年に交通事故に遭った後に備わったといいます。
事故後、入院し、一週間ほど麻痺でまばたきができなくなってしまった蔡頂倫をみて、家族だれもがこのまま寝たきりになるものと思ったほどの事故でした。しかしながら意識は少しずつ戻り、１年後には退院。ただし息子のこと以外は認知できず、身体障害２級と認定されました。
「１日中ぼんやりしてました。家にいながら自分の家がどこにあるのかさえわからないで、隣近所の人たちは皆、私のことを『脳に病気があってばかになった』って言ってました。それからしばらくの間、字ばかり見てました。MTVの歌詞、新聞記事、街角の広告、食品袋に書かれた産地などの名称。ただ見ることが好きでした。意味がわかるかどうかは関係ありませんでした」
新たな才能に気づいたのは、2009年、友人たちと集まった際にそこにいた全員の姓名の画数を言い当てたときでした。

以来、多くの人々が彼の才能を試したといいます。すらすらと画数を間違いなく言い当てる蔡頂倫を、人は「筆畫哥（筆画の兄貴）」とよびました。しかしその才能は彼に実利はもたらしません。そんな蔡頂倫の現在の夢は、ギネスに載ることだそうです。
「聞いた話だとギネスには申請、審査費用で数千元かかるそうなんです」

保安の仕事で月144001440元の収入。一家４人暮らしだと余分なお金はありません。蔡頂倫は好きだったたばこをやめました。
「これで一カ月100元貯金できます。いつか十分な費用が貯まる日がくるでしょう」