HEAVEN

―CNN―
「耳と鼻をそぎ落とされたときに気を失いました」
こう語るのはビビ・アイシャ。アフガニスタンの19歳の女性です。アイシャは夫の家族の名誉を汚したという罪でタリバンの法廷で裁かれました。
「冷水を浴びて目を醒ましました。でも血しか見えませんでした」。

話はアイシャが８歳の時にはじまります。
彼女の父親は「baad」とよばれる慣習に従い、彼女を他の家に嫁がせることを約束しました。「baad」というのは、いがみあっている家同士で、争いを解決する手段なのです。
16歳になったアイシャは、ウルズガン州に住む許嫁の家に連れていかれました。しかし夫となるべき男性はパキスタンで戦っているらしく、そこにはおらず、彼女を出迎えたのは許嫁の父親と10人の兄弟たちでした。

アイシャは２年間、なかば囚われの身としてその家で暮らしました。絶えることのない罵倒、そして拷問。なにかを考える時間も与えられなかったアイシャは、そこから逃げだそうと決心します。

近所に住む２人の女性の協力のもとで家から逃げ出したアイシャでしたが、カンダハルに着いたところで女性たちに裏切られ、他の男性に売られそうになります。ここで女性たちもろとも警察に捕まりました。

アフガニスタンでは女性が逃亡をはかることは罪になります。収監されたアイシャは３年の刑がいいわたされましたが、大統領の特赦で５ヶ月に減免されました。ところが出所したところで夫の父親に見つかり、家に連れ戻されました。

アイシャはここで初めて夫に会ったといいます。しかし夫がパキスタンからもどったのは、アイシャを家族の名誉を汚したという罪でタリバンの法廷に訴えるためでした。

タリバンの法廷は、アイシャの鼻と耳を切り落とすという刑を宣告しました。
刑はウルズガン州の山の中で、夫により執行されました。そのままに放置されたアイシャでしたが、彼女は生き残りました。

「ビビ・アイシャはアフガニスタンにおいて虐待に苦しむ数千という女性のうちの一例に過ぎません」。Women for Afghan Women (WAW)の代表、エステル・ハイネマンは述べます。
「この国では人口の半分―女性―が、暴君の前にたやすく跪くのです。それは出来合いの奴隷をもつということです」

アイシャは鏡を覗くたびに囚われていた過去を思い出します。そこには笑顔はなく、長い間の不当な扱いにより、十代の高揚が失われた表情だけが見てとれます。