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2008.09.15 (Mon)

ティナ・スモール物語(25)

80903k.jpgええと、リクエストを多くいただいて、北京オリンピックが終わったら、と申し上げましたお約束。「ティナ・スモール物語」再開です。じつに1年4ヶ月ぶり?
続けるとしてひと月2回のペースでしょうか。勘がもどるまでしばらく掛かりそう。このシリーズに限ってはコメント欄を閉じさせていただくことをご容赦くださいね。



「どうぞお掛けください」。
ズリフィカールさんが革の肘掛け椅子を指さします。言われるままに腰をおろした私は、暖炉の上に飾ってある天使の絵に目をとめました。

背に翼をもった男の子が手に持った弓に矢をつがえています。まるで絵の中から飛び出して、こちらに向かっていまにも矢を射らんとするその表情に、私は思わず夢ではないかと頬を抓ったものです。

「じつは、ここでは週に三回掃除をしに来るお手伝いさんと庭師と運転手のほかには、だれも雇ってないんです。うちのことはほとんど僕ひとりでやるんですよ。でも僕自身それを楽しんでもいるんです」。
そう言ってキッチンに向かったズリフィカールさんの気さくな態度に、私はおどろくと同時に好感をもちました。
と、そこに庭に面した扉から、毛づやのみごとな3頭のグレイハウンドが部屋に入ってきました。犬たちは私には構わず暖炉の前に跪きます。少したって腕にタトゥーを施した赤毛の男性が入ってきました。

「おう、もしかしてクリスティーナさんかい? おれの名はジム。モハメドはいるかい?」
「彼はキッチンです」。そう答える私に、たいして興味もなさげの男性はグレイハウンドをあやしながら続けます。
「ああ、たぶん奴さんの好きなミントティーを煎れてるんだ。はっはっは。奴に何かされなかったかい?」。そこにズリフィカールさんがトレイをもってもどってきました。
「クリスティーナさん、彼の言うことは気にとめないでください。なにしろ彼の言葉遣いの悪さといったら、ポン引きでさえ逃げ出す始末ですから」。

訝しげに見る私の視線にジムは笑って返します。私は場を楽しむことに決め、微笑みを返します。ズリフィカールさんが紅茶を注ぎ、そのエキゾチックな瞳で私を見やりました。
「ここを自分の家だと思ってくつろいでください。もちろん気に入っていただければの話ですけれど」。
「とんでもありませんわ。まるで雑誌のなかでしかお目にかかれなかった世界が現実にあるなんて」。
私の言葉にうなずくと、ズリフィカールさんはこう続けます。
「ここで気の知れた同士でわいわいやるのが好きなんです。もちろんプライバシーは完全に保たれますし、もちろん隣からだって邪魔は入りません。なぁ、ジム?」

ズリフィカールさんは宅の上にあったシガレットケースから煙草を一本とると、私に勧めました。ふだん煙草を嗜まない私ですが、勧められるままにそれを受け取ります。いっとき悪い予感が胸を過ぎりました。彼は私に目を置いたまま、言葉を続けます。
「もうすぐ友人たちがきますよ。きっと今までに見たこともないような魅力的な女性を前にして、びっくりすることでしょうね。クリスティーナさん、あなたにもきっと楽しんでもらえることと思います」


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