2007.09.14 (Fri)

学舎に「飛んで」くる子供たち―怒江のリス族

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南方週末
2007年9月、雲南省福貢県薫製村民族小学校の新学期が始まりました。
小学校は二棟からなり、小さいながらもバスケットコートをひとつ、備えています。
この地を流れる怒江の川縁を整地して建てられた学校には、現在生徒数が52名。そのうち18名が川向こうに住んでいます。生徒はいずれもリス族の子供たちで渓谷の村落に住み、毎朝こうしてワイヤーロープを伝い、学舎に「飛んで」くるのです。

両岸の距離はおよそ100メートル。ただただ渡された鋼のロープを拠り所にナイロンの縄を括った滑車に身を預けて、身震いするような急流の上を伝ってくる子供たち。
3キロほど離れた場所には木の吊り橋があるのですが、往復に6キロ。朝のまだ眠たい時間にわざわざそんな遠回りをする子はリス族にはいません。吊り橋にしたところで、橋の袂にたどり着くまでには、ほぼ直角にちかい断崖が待ちかまえているのです。

今年小学校三年、10歳になったばかりの余春は、虎の猿の末裔―リス族の典型的な体つき、痩せて背が低くすばしこい少年は橋なんて渡ってたら遅刻しちゃうよと笑います。
縄を三つに括り、自分ともうひとりの体を滑車に結びつけると、余春はそっと岩壁をけり出します。ワイヤロープの上を低くくぐもった音を建てて滑る滑車。ワイヤーロープは優美な弧を描いて余春らの体を送り出します。川向こうに着くまでほんの5、6秒。渡り終えた余春の顔に会心の笑みが浮かびます。
余春は雪の日がいちばん好きだといいます。ワイヤーロープの上に積もった雪が滑車に潰され、ギギッと音をたてるからです。

怒江付近のリス族は幾重にもそそり立つ険しい山々と、山間に流れる怒江に塞がれた生活を宿命付けられました。山嶺は剣のように険しく、怒江から立ちのぼる水煙は村を覆い隠します。祖先からずっと宛がわれてきた環境をもって、臆するということはリス族にはあり得ません。
吊り橋を望んだところで、建設費には少なくとも4、50万元かかるでしょう。国家級の貧困県である福貢県には、年の全予算をあわせても200万元しかないのです。

2008年には北京でオリンピックが開かれます。記者は子供たちに試しに北京はどっちの方向にあるのと訊ねました。
子供たちがそろって指さしたのは、この村から唯一主要な道路に出られる切り通し。村から外に出るにはほかに道がないのです。

子供たちは学校では共通語を学びますが、仲間同士のときはリス語が主です。今までに下に落ちた者はなく、そもそも落ちることなど考えられないというリス族の子供たちは、もしかしたら山の精と水の精たちによって守られ、怒江の川面にかかる虹の橋をわたる術を心得ているのかもしれません。 (下はリス族の高床式住居)

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