2007.07.24 (Tue)

「活猫水煮―生きた猫の水煮」を食べる(2)

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猫舎から出てきた調理人は、傍らに立てかけてあった50センチほどの鉄パイプで猫の頭を叩きはじめました。思わず目を背ける記者の前で四肢を掻くように必死の抵抗を続ける猫。哀れなほど痩せて肋が浮き出た白猫の目に力がなくなりました。
猫舎と厨房とは土間で続き、ここでひとり客が猫をしめる様子を見にきたのか、記者の横に立ちシャツの袖をめくった手で猫を指さしながら解説します。「あれ、完全には殺さないんだ。最後は湯の中でお陀仏っていったところかな。これが『活猫水煮』の由来だよ」。客は記者の方を向いて微笑むとぽんと腕を叩きます。

ぐったりとなって紅いポリバケツに抛り込まれた猫は、口といわず目といわず血を噴きながらそれでも弱々しい声で啼いています。調理人はバケツごと猫を厨房に運ぶと、湯のたぎっている径60センチほどの寸胴鍋に猫を落としました。ここでまた悲痛な叫び声があがります。
次いでどこからか拳ほどの太さの擂り粉木をもってきた調理人は、鍋の前に立つとものすごい勢いで湯をかき回し、中の猫を突き始めました。
「ここまでしてどうしてまだ打つ必要があるんですか?」思わず問いかけた記者に調理人は答えます。「あんたがたにはわからないだろうけど、こうした方が味がよくなんのさ」
後ろから女将の声も聞こえました。「これがウチの看板なんですよ。さっきあのまましめてたら、そりゃあもう味が落ちますから」

およそ5分ほど擂り粉木で猫を突いていた料理人は、額に滴る汗を手の甲で拭うと猫の屍を円柱状の器械に抛り込みます。洗濯機の脱水槽に似た器械はスイッチを入れると、ゴトンゴトンと激しく猫のぶつかる音を響かせながら回転を始めました。調理人は、回転する円柱に上から水をかけはじめます。
「これか? 毛を抜いてんだよ」
「はい、もちろんうちは専門店ですから、衛生にもきちんと心がけ、毛もこうしてキレイに取り除いているんですよ」
どうやら調理人の口べたを知ってか、ここでは女将が説明役のようです。

暫くしてサッパリと皮だけになった猫を引き上げた調理人は、量りに載せました。「7斤8両(約3.9キロ)。上等上等」。まな板の上に置かれた猫はここに至ってようやく腹を捌かれ始めました。

席にもどった記者は、さきほど横で解説してくれた男性客に酒を勧めました。
「よくここに来るんですか?」 魏と名乗った男性はこう答えます。
「ここは有名ですからね、よく来ます」
魏さんの言うことには、喘息とリューマチを患ってから猫肉がいいと知り、ここ二年ほど通っているそう。また実際に効くのかどうかはさておき、夏場はさびれた様子のこの小路も、冬になると街の外まで車の列が出来るほど猫肉に対する需要は多いことを教えてくれました。

質問も途切れがちの記者を嘲笑うかのように、宵になって幾分涼しくなった風が卓の上をそよぎます。
小一時間ほどして、満面に愛想笑いを貼りつかせた女将が皿に盛った猫肉を運んできました。肉からほのかに立ちのぼる湯気をかき消すように、さっそく魏さんの箸が伸びました。

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Tags : 猫肉 | 屠殺 | 広東省 |

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