2007.07.04 (Wed)

傍若無人な聴衆を前に、泣き出して公演を中止したフランス人ピアニスト

70704c.jpg揚子晩報
演奏がはじまっているにもかかわらず、椅子から跳んだり撥ねたりする子供たち。携帯の着信音は鳴りっぱなしで、話し声や笑い、ときには叫び声が飛びかう客席。
ジャンルが何であれ、中国で催されるコンサートの会場ではごく一般的な状況で、すでに話題にする人もなくなりました。

しかし先月29日に南京芸術学院附設のホールで催されたピアノ演奏会に招かれたフランス人女性には、この光景は少々きつすぎたようです。パリ国立音楽院から招聘されたピアニスト、布菲(ビュフ?)さんは、一時としてじっとしない聴衆に心を痛め、演奏中に涙をあふれさせ、公演を中止しました。

公演はいちばんいい席で280元。結構な値段です。ビュフさんはリストやシューマンを弾かせたらフランスでも屈指というピアニスト。これまでにも世界中で公演し、200回以上ものコンサートに招かれたといいます。その繊細かつ優雅な調べがとつぜん止まりました。かわって彼女の嗚咽が聞こえます。
客席はというとほとんどが小さい子供連れ。中国でも余裕のある層が、わが子に情操教育をというのでしょう。しかし子供たちはそんな親の気持ちなどわかる筈もなく、椅子の上で跳んだり撥ねたり。ときおり奇声を発して騒ごうとも、親はこれを制止しません。あまりの騒がしさにいたたまれず泣き出したビュフさんはそのまま演奏を中止、ステージ裏に引っ込み、これ以上公演を続けることができない旨を主催者に伝えました。

ビュフさんは今年54歳。フランス人の一般的なイメージとされる高慢さからはほど遠く、温和で、客員教授として迎えられた南京芸術学院でも生徒への指導は細にわたり、学生たちからの信望もあつかったといいます。
今回で三度目の来訪となるビュフさんは自身でも南京が好きだと言います。
「昨晩はまったくもって私自身の問題。物音で集中できず、心の平静が保てなくて、これではお客さんを納得させる演奏はできないと思ったの。南京のお客さんには、私の最高の演奏を聴いてもらいたかったのよ。胸がいたむわ」

こうしたことは今はじまったことではありません。人民大会堂におけるニューヨークフィルの初めての公演時には、演奏がはじまってからでも遅刻して入場する人が後を絶たず、演奏中の入場禁止という決まり事もまったく無視された状態でした。また話し声や飲食物などの袋をあける音、子供の叫び声は通常のコンサートでは当たり前。これに近年は携帯の着信音に電話での会話が加わりました。親たちは子供をほとんど叱ることなく、むしろ自身でも写真を撮るのにフラッシュは焚くわ、ビデオをまわすわの傍若無人。

しかしこれは中国人に今まで「音楽を鑑賞する」という伝統がなかったからでもあります。代々伝わってきた音楽は戯曲であり、戯曲は観る側聴く側もいっしょになって参加し、「唱念做打」、鉦や太鼓を打ち鳴らして演者とともに言葉を真似るというのが、「音楽」との関わり合いだったのです。
戯曲がすたれ、それにかわって入ってきた西洋音楽に、私たちは、西洋人のように群れをなしてホールに向かいました。聴衆ではなく、「観衆」として。されさえ巨大な進歩なのです。

「観衆」たる中国人はこう言います。
「高尚ぶっているのは一部の専門家ばかり。一般の中国人は音楽家をリスペクトすることはない。音楽そのものにひれ伏すのだ。親愛なる西洋人たちよ。われわれのために涙を流すことはない。それよりも中国には中国の観念があり、哲学があることを知ったほうがいい」

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