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2006.08.30 (Wed)

ティナ・スモール物語(13)

60825a.jpg学校に話をもどせば、時間は瞬く間に過ぎ、平穏そのものの日々が続きました。
勉強は出来たほうでした。 ごく早いうちからレベル0を修得できたのは、あまり人付き合いをしなかったため、勉強に専念できたということもあったのだと思います。 結果的にセレクションテストにおいて、15歳までに5つのレベル0をとったのですから、まあ誇れるキャリアなのかもしれません。
先生方は学校に残って大学進学のために勉強を続けることを勧めてくれましたが、経済的にもひっ迫していることを知ってましたので諦めざるを得ませんでした。 学校にいる間にタイプを覚えようとしたのも、早く収入を得ることが出来るからというのがその理由でした。 人付き合いを避けたのは、卒業して早く社会に出ることばかりを考えていた私自身の選択でした。 どのグループにも属さず、いわば一匹狼を貫いたのです。

それでもこの間、たった一度だけディスコに行ったことがあります。 ありったけの勇気を振り絞ってお店のドアをあけた途端、男の子の視線を全身に感じたことを思い出します。 私の出で立ちといえば、胸の膨らみを隠すため、ヒッピー風のゆるやかなスモック。 それにタイトなジーンズを穿いていました。
階上のバーでオレンジジュースを注文した私にウェイターはとりたてて不審な表情は見せず、カウンターに下がりました。 おそらく私の胸を見て、十八は過ぎてると踏んだのかもしれません。 運ばれてきたジュースに口をつけながら私はしばらくフロアを眺めていました。
階下のフロアは壁を紫がかった色で塗られ、天井には音楽にあわせて明滅する赤や青のスポットが提がり、床は半透明のタイルが並べられてこれも音楽にあわせて明るくなったり暗くなったりしていました。
照明が閃くたびに人の影が映し出され、ちょうどコマ落としの映画を見ているような感じでシルエットが動きます。 瞬く光はジュースのグラスをとった私の手にも注がれ、その不思議な感覚にしばらく身を委ねていました。

男の子たちのステップに魅了されながら、私はここに来た目的を思い出しました。 踊りにこそ来、見物にきた訳ではありません。 けれどもフロアに下りるにはあと少しの勇気を必要としました。 ジュースをたのんだ時には年を訊かれなかったし、お酒を注文してみる? 私は自問自答します。 お酒を飲めば気が大きくなるというのは級友から聞いていましたし、私自身、ディスコに限らずとても興味があったのです。 でも家では父が大酒飲みだったこともあって、母は何も教えてくれませんでした。 お酒の種類さえ知らなかった私が唯一知っている名前はバカルディ。 女の子の間ではおいしいと評判でしたし、何よりもその音の響きが私には心地よく感じられたのです。

曲と曲の合間にカウンターを訪れた私は、バーテンが気づくの待ち、バカルディを注文しました。 矢継ぎ早に何で割るか訊かれて戸惑いましたけれど、バーテンはウィンクを返すとパイナップルジュース割りを作ってくれました。
グラスをもってテーブルにもどり、再びフロアを眺めながらお酒をすすり始めます。 初めてのお酒は神秘的な味。 でも嫌いな味ではなく。 これも父譲りかのかもしれませんね。
フロアでは強いコックニー訛りのDJ、私が田舎育ちのためにそう聞こえただけかもしれませんが、がリクエストを読み上げていました。
「次のナンバーは愛らしい女性からのリクエスト。 ピッチピチのジーンズに挑発的な瞳。 彼女の誘いにのってみるかい? 曲はストーンズの 『パラシュート・ウーマン』!」。
笑みを浮かべたバーテンがカウンターから小さく手を振っていました。私といえば、部屋全体が音楽にあわせて回りはじめ、生暖かいものが背筋を駆け上がってくる感じ。 頭は空っぽで体中がゾクゾクし、おかしくてたまらず、一人でクスクスと笑っていました。 そして気づいたときにはフロアに下り、曲にあわせて体を揺すっている私がいました。
その時にかかっていた曲、いまでも憶えていたりします。 アバの 「ダンシング・クイーン」。 素敵なナンバーでした。


ティナ・スモール物語(12) / ティナ・スモール物語(14)

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