2007.08.15 (Wed)
14年間で52名を殺害した連続殺人犯、ピチュシキンの予審はじまる

被害者をチェスの盤目にたとえて、63人を殺害したと吹聴する大量殺害犯、アレクサンドル・ピチュシキン(Alexander Pichushkin)容疑者の一連の犯行のうち、52名の殺害容疑について、13日モスクワの裁判所で予備審問がひらかれました。本法廷は9月13日より開始される見通しです。
チェックのシャツを着、なかば表情を強ばらせたピチュシキン容疑者は腕組みをしたり解いたりしながら、落ち着かない様子で法廷での審問に答えました。
一連の殺害は1992年から2006年までの14年間におこなわれたものとされ、昨年6月に逮捕されて以来、個々について裏付け捜査がなされてきましたが、そのうち立件されたのは52名です。
アレクサンドル・ピチュシキンは、モスクワにあるスーパーの店員で現在33歳。殺害は1992年に学友を殺して以来続けられていました。その多くは孤独な老人を狙ったもので、公園で酒を勧めては森の奥で杯を交わし、相手が酔ったところで金槌や酒瓶などで後頭部を殴打。殺害にいたったものとされています。
被害者が身寄りや縁故のない老人が主だったために、事件や行方不明の届出などが少なく、それが犯人の逮捕を遅らせた因となりました。
ピチュシキンは、殺害をゲームに喩え、一人殺すたびにチェスの盤目に印をつけ、大量殺人のギネス記録を狙ったなどとうそぶく一方で、現実にロシアの大量殺人犯、1994年2月14日に銃殺刑に処された、推定52名殺害のアンドレイ・チカチーロの記録を意識していたことも伺わせました。
「人を殺さずにはいられなかった。殺人というのは僕のなかでは「食いもの」と同じ。なくてはならないものだった。年寄りばかりを狙ったのは、早いとこ極楽往生させてやりたかっただけさ」
こう語るピチュシキンは、生まれた時に父はなく、母親もピチュシキンを産んで間もなく収容所送り。祖母に育てられたピチュシキンは、その祖母が亡くなってから自らの運命と世に恨みを抱いたといいます。
一匹の犬を連れ、よく公園を散歩し、その犬が死んでから骨を公園に埋めたピチュシキンは、この犬の墓のまわりで多数の老人を殺害したとされていますが、遺体そのものはまだ三分の一も見つかっていません。
ピチュシキン逮捕のきっかけとなったのは、同僚の女性マリーナを殺害後、遺体が公園で発見され、警察がマリーナ宅を捜索。ピチュシキンの名を記したメモが見つかったことで、殺害二日後の2006年6月16日に自宅で逮捕されました。