HEAVEN

学校では級友たちに笑われる毎日。歩くだけでも腫瘤が揺れるため、跳んだり跳ねたりもできません。学校に行きたくないと告げたとき、張は父親から一度だけ殴られました。しかしいったん挫けた気持ちを奮い立たすことはできませんでした。

中退した張は両親の畑仕事を手伝うほかは、友人もなく遊びにいくこともありませんでした。
青年となった張は人の紹介で見合いをしましたが、女性のほうが張の顔を怖がり、破談。仕事も自分で建築関係の仕事を探し当てましたが、社長が現場に視察に訪れての数日後、解雇されました。
「社長は事故が起きるのを心配したんだよ」。張によると腫瘤が塞いでいるために左目が見えず、それがもとで現場に事故が起きることを社長が心配したというのです。この頃、腫瘤はすでに頭半分ほどの大きさにまで成長していました。
ここで父親は決心しました。子供の頃から忙しさにかまけて放ってきた張を病院に連れて行き、息子の腫瘤を手術でとってもらおうとしたのです。

河北省石家庄市区にある中国人民解放軍白求恩和平病院で張は神経線維腫の診断を受けました。腫瘤を切除する手術はそれほど難度の高いものではありません。輸血用に豊富な血液があればの話です。
張の血液型は、RHマイナスB型でした。中国ではその希少さから「熊猫血(パンダの血)」とも呼ばれる型で、張自身から400cc採血しても都合700ccしか病院にはないそうです。
張の家庭の事情から、手術費をいくらか減免することをあらわしている病院では、現在、市民にRHマイナスB型の献血を募っています。