HEAVEN

来年４月にあらためて性再判定(性転換)手術を受けることになり、現在では職場でもカミングアウト、フルタイム、女性として過ごすというキャスはこう語ります。

「もちろん今では自分自身で性転換手術をしようなんていかに馬鹿げたことだったか、だって出血多量で死ぬ危険さえあったんですからね、でもあのときはそうすることが唯一の解決方法だと思ったんです。
ごくほんの小さい頃から性別の問題と闘ってきました。そして迎えたあの夜、ビールを飲んでいました。そのとき下を見て思ったんです。これがあってはいかんのだ、と。

私は階下におりて、道具箱からスタンレーナイフ(カッターナイフ)を取り出し、切りはじめました。ほんの二、三分で切れましたけど、信じがたいほどの痛みでした。酔いはとっくに醒め、自分がいま危険な状態に陥っていると自覚しました。ハンカチで押さえて出血を止めようとしながら999にダイヤルしました。ここで意識がなくなりました。気づいたのは病院のベッドの上で、ペニスがまだついていると思ったことを覚えています。

医者の説明はこうでした。もしあんたが性再判定(性転換)手術を受けるという権利を行使したいなら、まずペニスがなけりゃダメだとね。だからくっつけた、と」。

事件の後、キャスは友人や21歳になる娘のジョディに支えられて生き方を変えました。

「その後はフルタイム、女性として生きることを選びました。職場の同僚や友人がなんて言うか心配でしたけど、結局は彼らに支えられました。小学生の頃からずっと男の子であることが落ち着かなかったんです。十代になってもガールフレンドが欲しいとはべつに思いませんでした。でもなんとか自分を慣れさせようと数人の女の子と付き合いました。そしてリンダという女性と結婚しました。

女装したいんだという気持ちを告白するまでには何年もかかりましたね。でも彼女は理解してくれて支えてくれました。結局は離婚することになりましたけど、別れても親友として付き合っています。

そう、女装。自分は女装したいだけじゃないんだ、女性になりたいんだとわかったときには本当に落ち込みました。でも、初めて女装して人前に出たときの高揚といったら。

手術が待ちきれません。100%女性になりたくて。心の底ではずっと女性でいたかったことを、私自身、知っていたのかもしれません。でもそれをはっきりと悟ったのがあの事件だったんだろうと思います」