HEAVEN

―Mail Online―
お腹のなかの結合双生児を中絶せず、産むことを選んだ十代の母。いよいよ出産を今週にひかえて英メイル・オンラインがカップルにロングインタビューを試みています。

2人が住んでいるのはウェールズ州のアングルシー。友人たちとのパーティで出会ったという2人は、妻がローラ・ウィリアムズ(18歳)、夫がごみの収集を仕事とするアレッド・ウィリアムズ(28歳)のカップル。
夫のアレッドいわく「彼女は他の女の子とはちがってた。すごく純粋だったんだ。僕は飲めなかったし、彼女はいまひとつパーティになじんでないようだったね。で、気が合ったのさ」という2人は、知り合って間もなくローラが妊娠。愛娘が授かります。

「若いうちに子供が欲しかったから、カーリーが生まれたときはほんとうにうれしかったわ」と語るローラ。しかし、その数ヶ月後に宿した双子が結合双生児だとわかってから、2人の苦悩がはじまりました。
ローラが妊娠に気づいたのは6週目を迎えたときでした。悪心もなく経過は順調。12週目を迎えたローラは最初のスキャン検査を受けに病院を訪れました。しかし画像を見ていた看護婦が首を傾げ、自分ひとりでは判断をくだせない旨を彼女に伝えました。
その日の午後になって、再度医師にスキャン画像を見てもらったローラは、ここで運命の言葉を聞くこといとなります。
「ローラさん、双子だったよ。ただ、ひとつ残念なことを伝えなければならない。よく聞いてほしい。2人の赤ちゃんの体の一部がつながっているんだ。おそらく14週を越すことはできないだろうと思う」

ローラは医師の言葉の意味がわかるとその場で泣き出しました。彼女を伴って病院に来ていたアレッドも心臓を刃物で突かれたようなショックを受けたと語っています。
医師は中絶を勧めました。おそらくは14週を迎えるまでに胎児が死亡するだろうこと、もしそれを超えて生き延びたとしても、胎児の体に将来さまざなな合併症を引き起こす可能性があること、そして何よりローラ自身が子宮摘出しなければいけなくなる可能性があることなどを丁寧に説きます。スキャン検査を受けるために支払ったお金の10ポンド(約1430円)は返金されました。

家にもどったアレッドとローラは、まず知識を得ようとネットで調べはじめます。朝方までかかってわかったことは、結合双生児にはさまざまな形態があるということ、たとえば頭蓋がつながった双生児、胸部がつながった双生児。またひとつの体に2つの頭があった例もあることがわかりました。
たくさんの結合双生児の例があり、双生児が共有している部分はみなそれぞれにちがいます。ただ確かなことは、このたくさんの例はみな生きて生まれたということでした。
アレッドとローラはここで決心したといいます。「いったんそのことに気づいてから、僕たちはこう思ったんだ。『闘わずに逃げるのはやめよう』ってね」

医師とおなじく母親も中絶をすすめます。しかしいったん決心した2人は最初のショックを乗り越えると、いまの状況にまともに向き合うことを選びました。
2週後、アレッドとローラはセカンドオピニオンを得るために、ちがう病院で再度スキャン検査を受けることにしました。事情を説明し、彼女を診たのは女医です。この女医が有能でした。
彼女はローラのいまの考えを細かく訊ね、産むことへの意志を確かめると、スキャン画像を示し、胎児が胸からへその間まで癒着していることを医学用語などは使わずに極力易しく説明します。診療費も受けとらなかった女医は、どの器官を共有しているかはまだ不明で、生き残る可能性を数字であらわすことはできないけれど、もし共有しているのが胃だけだったとしたらチャンスがあると述べました。

結合双生児は生児出生40万に1回の割合。生き残る可能性はさらに少なく、過去500年の間に600組の生存しか確認されていません。その多くは母親の年齢が25歳から40歳の間です。母親が18歳という例はこれまでありませんでした。
24週目で赤ちゃんが女の子だとわかった2人は、娘のカーリーを伴って結婚式を挙げました。
27週目にリスクの大きい出産を取り扱う病院を紹介してもらったローラはここで再検査。経過は順調で合併症もなく、ローラ自身も貧血のほかには目立った症状もなく35週目を迎えました。
正常な出産と比べれば月足らずですが、赤ちゃんはサイズの問題から、ここで帝王切開にてとり出されることになります。それがいよいよ今週。

「二人してすごい勢いでお腹を蹴るの」と微笑むローラと彼女を気遣うアレッド。2人の赤ちゃんの名前はもう決まっているそうです。フェイス(Faith)とホープ(Hope)。信頼と希望です。